結果報告編第3回のテーマは、“コミュニティ・ルームの利用”についてとなります。
2009年10月に『シェアプレイス五反野(株式会社リビタ運営)』にて実施した、コミュニティ・ルームの利用行動に関する調査の結果を分析します。
下記のグラフは、休日、平日夜、平日朝のコミュニティ・ルームの時刻毎の滞在人数を示すものです。
休日は、昼食、夕食の時間帯にそれぞれ滞在人数のピークがあります。夕食の時間帯には、最大12人がコミュニティ・ルームで時間を過ごしています。なお、この日は丁度10人ほどが鍋を囲って夕食をとっていました。18時過ぎに人が集まり始め21時過ぎに急激に人が減るまでの約3時間、常に10人以上の人が滞在しており、シェアハウスでの生活の賑やかさが垣間見えます。昼過ぎには2人の入居者が懇談したり、1人で軽食をとるといった行動も観察されました。
続いて、平日夜、平日朝のコミュニティ・ルームの時刻毎の滞在人数を示すグラフを示します。
平日夜には、細かく見ると18時、20時半、23時半、1時前の4回、滞在人数のピークが見られます。これらは、仕事が終わる時間帯によって自宅で夕食をとる時間が異なるためと考えられます。仕事が定時もしくは早く終わる人は18時頃や20時半頃に食事をとる事が多く、遅くまで残業をする人は23時半や1時前などに夕食や夜食をとっているようです。
入居者からは、「平日は、仕事が同じ時間帯に終わる人同士はいつも夕食の時間帯が重なる」、「仕事の時間がずれている人とは、平日にはあまり顔を合わせ事がない」といった話が聞かれました。平日朝も、7〜7時半の間に食事をとる人が多くピークがありますが、やはり出社が早い人は5時頃から、遅い人は9時前までコミュニティ・ルームに滞在している事が分かります。
下記のグラフは、休日、平日夜、平日朝の各滞在(1回ごとに個別にカウント)の滞在時間の分布です。
1回当たりの平均滞在時間は、休日は約30分、平日朝は約13分となっていますが、時間帯が同じでも滞在時間は大きく異なり、10分未満の短い滞在が半数以上である事も分かります。多くの入居者が、ちょっとした用事で頻繁にコミュニティ・ルームに出入りしているようです。なお休日には1度で2,3時間という滞在も珍しくありませんが、平日夜は1時間半程度まで、平日朝は長くても30分程度となっています。
下記のグラフは、休日、平日夜、平日朝の各入居者のコミュニティ・ルームでの滞在回数と滞在総時間を表しています。青い棒グラフが滞在回数、赤い折れ線グラフが滞在時間を表し、入居者はm(male:男性)またはf(female:女性)+A~Rで示されています。例えば休日のグラフ(1つ目)において、mFさんはコミュニティ・ルームに3回、合計1時間強滞在していた事が分かります。
先程、各滞在毎に時間の長さに幅がある事が分かりましたが、今度は入居者ごとに滞在回数や滞在総時間に特徴がある事が分かります。例えば平日夜のグラフでは、一晩の間に合計10回、約3.5時間もコミュニティ・ルームで過ごしている事が分かります。反対に、調査時には1日の間に1回だけ、時間もわずかな時間の滞在のみとなった人もいます。コミュニティ・ルームとの関わり方は、個々の入居者の考え方や、その時々の生活の都合などを反映して、多様であるようです。
下記は、今回の調査時にコミュニティ・ルームで観察された行動を記録したものです。
食事に関する行動 | 交流に関する行動 | 個人的な行動 | その他の行動 |
---|---|---|---|
調理 | あいさつ | 物置整理 | 消毒液持ち込み |
1人で食事 | 立ち話 | パソコン | 仕事の準備 |
複数で食事 | キッチンで会話 | テレビ観賞 | 手洗い |
食事片付け | 食事会話 | ||
懇談 | ・・など |
観察された行動は、食事に関する行動、交流(コミュニケーション)に関する行動、個人的な行動に大別し、それぞれ3〜5の行動に分類(計12分類)されていますが、中には各入居者用の保管スペースに食材を出し入れしたり整理する「物置整理」のような対象物件特有の行動も含まれています。ここでも、やはりコミュニティ・ルームで入居者同士の交流を含む、様々な生活行動が営まれている事が伺えます。
下記のグラフは、休日、平日夜、平日朝のコミュニティ・ルームでの各行動数の全滞在数に占める割合を表しています。
これらの結果から下記のような事を読み取る事ができます。
全体的に交流に関する行動が個人的な行動よりも頻繁に行われており、コミュニティ・ルームが主に食事と交流のための空間となっている事が分かります。
下記のグラフは、各入居者(f:女性、m:男性)の休日、平日昼、平日夜を合計したコミュニティ・ルームでの交流回数と滞在回数を表しています。
全体的に、滞在回数に比例して交流回数も増加している事が分かります。また、交流の中でもあいさつが多い人(fAさん)、立ち話が多い人(mFさん)、キッチンでの会話が多い人(fBさん)、懇談が多い人(mHさん)といった個性がある事が分かります。このように、シェアハウスにおける交流の回数や内容は各入居者により様々であり、それぞれが自由な交流を行っている事が分かります。
下記の表は、調査期間内にコミュニティ・ルームで観察された主な会話トピックの一部です。
料理に関して | ||||
---|---|---|---|---|
出汁の味 | カレーの具 | お茶 | アップルパイ | 明日の献立 |
趣味に関して | ||||
好きなケーキ | 各地のお土産 | 海外旅行 | ファッション | ボクシング |
亀田兄弟 | マニキュア | 醤油 | 日本酒 | 競馬 |
日光観光 | 携帯機種 | 椅子のデザイン | 台風 | 日本の港 |
ヨガ | ウォーキング | |||
仕事に関して | ||||
旅行市場 | 旅行パンフレット | 研究 | 建築設計 | 人材派遣 |
新しい職場 | エクセル操作 | IT試験 | 介護 | |
その他に関して | ||||
怪我の治療法 | 外出先 | 今日の予定 | 実家 | シェアプレイス |
運営事業者 | 視力 | 昨日あったこと | 家族の悩み |
当然の事ですが、コミュニティ・ルームでは非常にバラエティに富んだ会話が交わされている事が分かります。料理や趣味に関する事などの比較的軽い話が多いものの、仕事に関する事や家族の悩み、実家に関する事など、プライベートな比較的深い話も交わされています。